1692 文字
8 分
専門医を持たずに3年目からフリーランス、後悔していない3つの理由

医師3年目、専門医を持たずにフリーランスになる道は「アリ」か?

前回の記事では、専門医を取得せずにフリーランスへ転向することのメリット・デメリットを整理した。決して万人に推奨できる道ではないが、私自身はこの選択を現時点で全く後悔していない。

そ3つの理由について、私見を述べる。


1. 必要になればいつでも取れる#

|300x139

私は自他共に認めるフットワークの軽さがある。現在は西日本全域でスポットバイトをこなし、思い立てば数日後には海外へ飛ぶような生活をしている。

この「移動の意志」さえあれば、専門なしに対する不安は事実上、解消される。

  • 場所を選ばない覚悟: 将来的に専門医が必要になれば、北海道から沖縄まで視野を広げたらいい。頭を下げて受け入れてくれる医局や病院は、日本全国を探せば必ずあると考えている。

  • 年齢は単なる記号: 医学部には学士編入の医師も多い。数年程度の遅れは、長い医師人生というスパンで見れば「誤差」に過ぎない。

もちろん、同期とのキャリア格差や周囲の視線に耐える精神力は必要だ。逆に言えば、「どこへでも行く覚悟」が持てない、あるいは「世間体」がどうしても気になるのであれば、定石通り専門医を取っておくのが無難だろう。


2. 専攻医プログラムを「解体」し、独自のカリキュラムを組む#

|300x129

「内科専攻医プログラム」は、いわば複数の研修がセットになったパッケージ商品だ。しかし、その中身を分解してみると、全ての構成要素が今すぐ全員に必要とは限らない。

専攻医プログラムの構成要素(分析)#

カテゴリ具体的な内容
汎用スキル初診外来、救急対応、健診、継続外来、慢性期管理
専門スキル志望サブスペ技術(胃カメラ、カテ、透析など)、各科ローテ
アカデミアカンファ、学会発表、論文執筆、抄読会、フィードバック

私の場合、これらを「並列」でこなすのではなく、明確な「優先順位」をつけて習得することを選択した。

  • 最優先(汎用性重視): 外来、救急、訪問診療、産業医スキル。これらは大病院でなくとも、地方の中規模病院で十分に習得可能。

  • 後回し(常勤前提): 重症病棟管理や高度な専門手技。

  • 現時点では不要: 論文執筆や学会発表(初期研修医時代に一定の経験済みのため)。

来年度からは自ら交渉し、地方の慢性期病院と救急病院を掛け持ちする勤務形態を構築した。地方の現場は常に人手不足であり、自ら飛び込む若手医師は極めて歓迎される。

「組織に拘束されるストレス」を回避しながら、現場で切実に求められるスキルを叩き込む。 この「自作カリキュラム」は、私にとっては最適であったと考えている。


3. 「過酷すぎる働き方」への根源的な疑問#

|300x134

専攻医の働き方は、客観的に見て過酷と言わざるを得ない。

  • 平日・週末を問わないオンコールと呼び出し

  • 病院近隣への居住を強いる拘束感

  • プログラムの都合で強制される勤務地

  • 労働量にそぐわない給与体系(休日のバイト代で補填するのが前提)

「若いうちの苦労は買ってでもしろ」という格言があり、多くの上級医からもそのように助言された。

数年後の自分がどう思うかは未知数だ。あるいは後悔している可能性もゼロではない。しかし、時間は有限であり、何かを選択することは、他の何かを捨てることと同義である。

私は、「自由」と「時間」を選択した。

「寝当直」と「過酷な専攻医」のちょうど中間にある、ほどよい塩梅のポジションが既存のプログラムに存在すればそれを選んだかもしれないが、残念ながら見当たらなかった。それならば、自分で環境を構築するほかない。


結論:3年目フリーランスの適性チェック#

|300x151

これまでの経験から、この特殊なキャリアパスを歩めるかどうかのチェックリストを作成した。

✅ フリーランスに向く人#

  • 独自の価値観を持つ: 周囲の評価を切り離して考えられる。

  • 自己責任の覚悟: 自分を守ってくれる医局は存在しない。

  • 最低限の社会性: 事務職やコメディカルと円滑に連携し、患者さんや家族へ適切に病状説明できる能力。

  • 明確な目的意識: あるいは、「10年で稼ぎ切る」といった具体的な目標がある。

❌ 専門医を取るべき人#

  • 漠然とした不安がある: 根拠のない不安は、専門医なしの生活を蝕む。

  • 比較癖がある: 同期のキャリアアップを見て焦るタイプには不向き。

  • 仕事以外に執着がない: 自由な時間を与えられても持て余すだけになる。


最後に:医師である前に、一人の人間として#

|300x163

大学病院や研修指定病院に身を置く上級医は、いわば「王道のキャリア」を歩んできたエリートである。彼らのアドバイスには、どうしてもその環境特有のバイアスがかかる。

大病院では風当たりの強い「フリーランス」という生き方も、一歩外へ出て地方の小規模病院へ行けば、「来てくれてありがとう」と心から感謝される存在になる。

初期研修終了直後はともかくも、専門医取得後のキャリアは、もっと自由であっていいように見える。仕事はあくまで人生の一部。私たちは医師である前に、一人の人間である。

「自分は何を大事にしたいのか?」

その問いに正直に答えた結果がフリーランスであるなら、それは決して無謀な選択ではない。

専門医を持たずに3年目からフリーランス、後悔していない3つの理由
https://freelance-dr-log.com/posts/career-3rd-year-2/
作者
S Nishi
公開日
2026-02-22
ライセンス
CC BY-NC-SA 4.0