各記事からにじみ出ていると思うが、私はコミュニティに属するのが嫌いかつ苦手だ。
医学部は閉鎖的だと言われるが、そもそも噂さえほぼ回ってこなかったので、どう言われていたのかは分からない。ただ、もし「学年ぼっちランキング」なるものがあれば、確実にトップかそれに準ずる順位にいた自信がある。
その是非はさておき、そんな状態でも問題なく医師免許を取れること、そして私がどのような生存戦略を取っていたかを、医学生や医学部を目指している人へ向けて学年別に紹介したい。
はじめに:医学部は絶対評価。医学生はほとんど「いい人」

他学部ではそれぞれの評定で順位付けされるらしいが、医学部は基本的に絶対評価であり、同期の間での争いは存在しない。
また、医学部生のほとんどはいわゆる「いい人」だ。イメージで言うなら、学級委員の集合体。困っているように見えれば向こうから助けてくれるし、なんなら真摯に頭を下げれば手を貸してくれる。
つまり、試験の資料や様々な情報を手に入れる難易度は低い。医学部には「試験対策委員」など、過去問を管理してくれる人たちもいる(過去問が回収される試験でも、同期それぞれで担当問題を割り振って暗記・再現したり、先輩から資料を入手したり、模範解答を作成してくれたりする)。
私の完全独力ではおそらく卒業は無理だった。同期には深く感謝している。
とはいえ、完全におんぶに抱っこというのも微妙に感じたため、教室変更の連絡やたまたま得た情報などは惜しげなく公開していた。コミュニティに半ば属さずとも、貢献できることはある。
1,2年:イヤでも部活(サークル)に入っておけ

大学は高校とは全く違う。すべてを独力でやるのには限界がある。
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大学特有の謎システム(シラバスなど) 高校までと違い、自分で科目を選ばないといけない。医学系はすべて必修で勝手に入っていることもあるが、1年次の他学部と一緒に受ける授業は選択が必要だ。選び忘れて何の通知もなく、気づけば入学早々留年が確定していた……という事態は避けたい。
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「医学」という初めての学問 細胞と組織の違い、脾臓とかいう謎の臓器など、何も分からない状態から始まる。何が重要かも分からない。
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高校までの勉強からのパラダイムシフト 「すべてを完璧に頭に叩き込み9割以上を目指す」から、「膨大な量をざっくり把握し6割以上を目指す」への転換が必要だ。基礎医学の教科書は1冊500ページ以上がザラであり、すべてを網羅するのはほぼ不可能。
最低限、部活に入っていれば先輩の情報や資料(模範解答など)が手に入る。それを3〜5年分暗記・理解しておけば合格できる可能性が高い。
私は1年の前期は資料の存在を知らず四苦八苦していたが、後期になって手に入るようになり、かなり余裕を感じるようになった。
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入るべき部活 ハードな部活も存在するため、そんなにハードではないことを宣伝している部活がいい。全体的に優しそうな空気を醸し出しているところがおすすめだ。
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教科書など 周りの人と同じものを買っておくこと。
3,4年:QBオンラインを解き、先輩資料があれば余裕

ここらへんについては特に言うことはない。
「病気がみえる」と同じ企業が出している「クエスチョンバンク(QB)」という国家試験過去問の該当科目をひたすら解き(1科目せいぜい100問ちょっと)、先輩からもらった試験の過去問を数年分やっておけば問題なし。勉強法も1,2年までに身についているはずなので、特に困ることはない。
4年次でのCBTもよっぽどサボっていなければ問題ないので心配不要だ。
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教科書など
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病気がみえる(病みえ):各専門科で教科書を買わされそうになるかもしれないが、だいたいのことは病みえに書いてある。高い本を買っても二度と読み返さない可能性が高い。また、通読するための本ではなく気になるところを読む本だ。基本は電子版だけでいいと思う。
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レビューブック:通読、暗記、完全理解する対象。これが完璧なら国試まで通用する。各科100ページ程度にまとまっており、必要十分。イヤーノートは医学生レベルでは細かすぎるため、全員に必要とは思わない。
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動画学習について 全員には不要。自分が「動画で学習するのが得意」なのか「本を読んで勉強するのが得意」なのかを確かめてほしい。
5,6年:最低限のコミュニケーション能力が必要

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5年のポリクリ 5人くらいのグループを作り、すべての科を回る。試験はほぼない。一部グループ内でいざこざも起きていたようだが、ぼっちであればそもそも巻き込まれようもない。私の場合は運良く優しい人たちだったので快適だった。
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6年のクリクラ 選んだ科を1人で回る。ポリクリと違い、フォローしてくれる人はいない。勉強だけすればよかったこれまでと違い、最低限のコミュニケーション能力がないと厳しい。病院で働いている人たちにとって、医学生はそもそも邪魔な存在だ(優しい人も多くいるが、そう感じている人もいるのは事実)。放置されたり、非常に居心地が悪くなったりする。
これは環境からの警告のようなものだ。ここでうまく立ち回れないということは、研修医以降になっても大変である可能性が高い。
クリクラというのは、2週間ごとに新たな環境へ1人(あるいは少人数)で飛び込める、あまりない良い機会だ。どうせ2週間だけなので、恥などは捨てて、その都度「大学デビュー」的にいろいろ試してみるといい訓練になる。
ちなみに私は当時コミュニケーション能力が半ば廃用しており、人と目を合わすのも苦手だった。
現在は初めての病院でも普通に仕事ができてるし、コメディカルからの評価も上々だといくつかの病院から言われている。大丈夫だ。訓練すれば何とかなる。
卒業試験・国家試験

基本的にはこれまでの試験と同じ。これまで身につけた勉強法をもとに、過去問を処理すればいい。
ちなみに、「周囲の情報が大事」といった言説があるが、惑わされる必要はあまり感じない。私はひとりで勉強していたが、特になんの支障もなく平均点で合格できた。単に過去問を5年分くらい、すべて理解できるまで頭に叩き込んだだけだ。
- 教科書など 3,4年で買っていたものだけでいい。依然としてイヤーノートは全員には不要。
最後に:学生時代にしかできないことをする

医学の勉強はあとからでも、イヤでもできる。また、実際に患者さんの症例を見ながら勉強したほうが効率がいい。
医学部は他学部より忙しいと言われるが、高校時代よりは圧倒的に暇だ。有り余る時間はやりたいことに使ってほしい。
私もいわゆる「青春」的なことをやっておけばよかったような気もするが、私にそれが可能だったのかは不明である(同期がたくさん来ている花火大会で、私は駐車場整理のバイトをしていた)。
また、バイトについては給与より内容を重視してほしい。
ただでさえこれからの人生で「先生」と呼ばれ続けるのだ。塾講師よりも、怒鳴られまくるようなイベントや工場作業員を幾らか経験しておくほうが、後々のストレス耐性が上がる気がしている。
ともかく、人生において10代後半から20代前半という期間は今だけだ。今しかできないことを優先してほしい。